雪だるま 緒方×ヒカル
動かない雪だるま
話さない雪だるま
それは、当然だ。
だって、雪だるまなんだから。
白いスーツに白いコートを身にまとい白い雪の中を歩く緒方がいた。
そんな緒方の後をヒカルが歩いていた。
『なんか雪と同一化してるよ。』
遠くから見たら顔だけが浮いて見えるとさえ思いヒカルは、微妙に笑っていた。
「なにが可笑しい。」
前を向いている緒方の言葉にヒカルは、首を傾げた。
「緒方先生って後に目ぇついてんの?」
「そんなわけあるか。」
パシパシと緒方の背中を叩くヒカルをチラリと見て緒方は大袈裟に溜息を吐いた。
「お前が単純なだけだ。」
そして、雪の中をいつもの靴で滑りもせずにスタスタと足を進めた。
「ちょ・・・待ってよ。緒方先生ってうわぁ!」
緒方に追いつこうと足を踏み出した瞬間ヒカルは見事に雪に足をとられた。
「お前は一体なにをしている。」
派手に尻餅をついたヒカルの元に緒方がゆっくりと歩み寄る。
そして、しょうがないとばかりに手を差し出す。
ヒカルは、遠慮することなくその手を掴んだ。
「サッサと歩ける緒方先生が変なんだよ。」
「俺は、雪国出身なんでな。」
「嘘。」
「嘘だ。」
「なにそれ。」
クスクスと笑いながら立ち上がった勢いでヒカルは、緒方に抱きついた。
「緒方先生って雪だるまみたいだね。」
「ほう、どうしてそう思う。」
「白いから。」
「それだけか。」
「そう、それだけ。」
緒方は、ヒカルの頭をクシャクシャと撫でた。
そして、離れる前に少し強くヒカルを抱きしめた。
緒方は、動くし話す。
それは、当然だ。
だって、緒方は雪だるまじゃない。
「緒方先生。」
「なんだ。」
「ポケットに手入れていい?」
「勝手にしろ。・・・って俺のにか。」
「ほら、緒方先生も手入れてよ。」
そして、なにより緒方は温かい。
終了