月見 伊角×ヒカル
ビルの合間から見える満月をヒカルは、歩道橋の上から見ていた。
「こんなとこでお月見か。」
背中に温もりを感じて振り向けば伊角が笑っていた。
「ススキも団子もないけどね。」
ヒカルは、ふわりと笑って再度視線を月に戻した。
伊角もそのままヒカルに覆い被さるようにして歩道橋に手を乗せた。
「真ん丸だな。」
「うん。」
冷たくなってきた風に互いの体温が心地よい。
「ねぇ、伊角さん。」
「ん?」
「伊角さんには月の模様はどう見える?」
ヒカルは、振り返り伊角と向き合うような姿勢になり伊角を見上げた。
「そうだな・・・やっぱりウサギかな。」
「そっかぁ。」
ヒカルは、腕を伊角の背中に回しぴったりと身体を密着させた。
「進藤は、どうなんだ?」
「俺ぇ?」
ヒカルは、伊角の胸にグリグリと顔を押し付つけていた行為を止めて顔を伊角に向け笑った。
「俺には、笑っているように見える。」
「笑ってる?月がか。」
「そう、優しく笑って淡い光を降り注いでるみたいに見える。」
伊角は、ヒカルを抱き締め優しく笑った。
「進藤は、時々すごくロマンチストになるよな。」
「はぁ?なに言ってんの伊角さん。」
ケラケラと笑ってヒカルは、伊角の胸に顔を埋める。
伊角は、ヒカルの柔らかい髪を指に絡めながら月の光を浴びるヒカルを見つめた。
都会の夜の明かりは、まだ明るいが月の光の方が今日は強く感じる。
「お団子買って家で月見ながら食べようか?」
「いいね、それ。そうしよっか。」
伊角の提案にヒカルは賛同し、二人はコンビにでお団子を買って伊角の家に向った。
伊角家の全員に好かれているヒカルは、少し遅い時間に訪れたにも関わらず温かく迎えられた。
そして伊角は、母にヒカルを奪われ自分以外の家族とヒカルが談笑しながら月を眺めるのを見る羽目になってしまった。
終了