言ってもいいのかな どうやら俺は無意識に自分の感情が行動に出ていたらしい。 あの飲み会に来ていた連中にからかわれて判明したことだ。 そういえば進藤も言ってたっけ。 「冴木さん離してくれないしさ。」 記憶に無いのが残念だがそれで良かったとも思ってる。 意識が正常で進藤を抱き締めてしまったら俺はきっと自分を抑えられなかっただろう。 あぁでも俺の腕の中にいた進藤の感触だけはなんとく覚えてるな。 抱き締めた進藤がとても心地良くて安心して眠りについたような気がする。 それにしても あいつ抵抗しなかったな。 まぁそれもそうだよな。 酔払いに抵抗してもしょうがないって諦められてたんだろう。 そう想って冗談で笑い話にしようと何気に言った。 「悪かったな。酔払いに抱きつかれて嫌だったろ。」 その言葉にキョトンとする進藤に自然と笑みが零れた。 そして俺は次の進藤の言葉に鼓動が速くなるのを感じた。 「ん〜別に嫌じゃなかったけど。」 嫌じゃ・・・なかった? 「冴木さんの腕の中心地良かったしさ。」 心地良かった? 「なんて言えばいいのかなぁ・・・温もりに安心出来てよく眠れたよ。」 進藤・・・お前そう言うことをサラリと笑顔で普通言葉にするかね。 俺本気で期待するよ。 「そうか。」 「うん。」 でもなんでだろうな俺の想いはなかなか言葉にならない。 進藤は時折とても綺麗で哀しい笑顔になる時がある。 それはまるで何かを拒絶しているかのようにも見える。 「失って悲しむくらいなら手に入らない方がいい。」 そう言った進藤はすごく儚げで消えてしまうのかと錯覚した程だ。。 その時はわからなかったが今ならその言葉の裏がわかる。 『ねぇ・・傍にいてよ。いなくならないで。』 だって進藤は言葉とは裏腹にいつも縋りつくような瞳で拒絶の言葉を口にするんだ。 それに気がついたのは最近だ。 本当にまいるよな。 あの瞳は反則だとさえ想う。 碁盤に向かっている時の瞳からは想像出来ないよ。 なぁ進藤・・・お前は俺にどうして欲しいんだろうな。 俺の腕の中で安心してよく眠れたって? 俺はお前の・・・進藤の傍にいてもいいのか。 そして進藤・・・お前は俺の傍にいてくれる? 俺の想いを言葉にしても それでも進藤は俺の傍にいてくれるのだろうか。 終了 平成15年3月27日 |