寂しい〜ヒカル編〜

 

 

唐突に俺は伊角さんに言われた。

「進藤って時々後ろ振り返ってるけどそれって癖なのか?」

癖?

違うよ。

振り返るのは期待してしまうから

もしかしたらいるかもしれないと・・・いるはずもないのに。

「そんなに振り返ってる俺?」

「あぁ・・・。」

なんで伊角さんがそんな辛そうな顔すんの?

俺ちゃんと笑って言えてるだろ。

 

もういないんだ。

でも振り返る。

でもいない。

 

いない

イナイ

いない

イナイ

 

いないってわかってるんだ。

大丈夫・・・俺はあいつの分まで強くなる。

 

でも・・・

時々・・・

本当に時々だぜ。

 

寂しくなるんだ。

あいつと過ごした時間は 俺にとってすごく大切な時間。

ずっと一緒にいるんだと思ってた。

ズット傍にいてくれるんだと思ってた。

 

消えるなんて

いなくなるなんて

 

寂しい

淋しい

さみしい

サミシイ

 

寂しいんだ・・・・佐為。

 

『ヒカル』

幻聴なのか・・・俺はおもいっきり自分の後ろを振り返った。

 

「進藤・・・。」

俺の目の先には伊角さんがいた。

「伊角さん・・・。」

「何がそんなに不安なんだ?」

そう言って伊角さんは俺を抱き締めてくれた。

温かい・・・いつかはこの温もりも消えてしまうのかな。

 

あいつみたいに。

 

伊角さんが?

 

消える?

 

いなくなるの?

 

そんなの嫌だ。

 

伊角さんまでいなくなるなんて嫌だ。

俺を抱き締めて頭を撫でてくれないなんて嫌だ。

 

「消えないで・・・いなくならないで・・・」

俺の突然の言葉も伊角さんは優しく受け止めてくれた。

「大丈夫だよ。俺は消えないしいなくもならない。」

その言葉も俺を抱き締めてくれている腕もすごく温かかった。

 

だから俺はもう寂しいなんて思わない。

時々・・・は思うかもしれないけど それはしょうがないだろ?

 

 

俺は今でも後ろを振り返る。

其処に佐為はいないけど 伊角さんがいる。

 

 

だから俺は大丈夫だよ。

 

佐為・・・お前が笑ってるといいな。

 

 

終了

平成14年12月11日