蒼い空
今日は、すこぶる良い天気だ。
任務が休みのナルトにとってはすごく修行日和なのだ。
だけど、シカマルがお前は休む事も覚えろと煩く言う。
だから、今は、シカマルと二人静かに誰も来ない森の中でまったりと過ごしている。
普段騒がしい行動をしているナルト・・・それは、皆の前にいる時だけだ。
ナルトが騒いだり悪戯をしたりするのは、皆に自分がここにいると主張したいからだ。
シカマルは、ナルトの存在を認めてくれている数少ない人の一人だ。
だから、今ナルトは騒がずのほほんと横になっているシカマルの隣に静かに座っている。
別段何をするわけでもなくナルトは、空を見上げていた。
当初に述べた通り雲一つ無い良い天気だ。いうなれば快晴だな。
今年生まれたであろう青々と茂った大きな木の葉が空の合間合間で揺れている。
ナルトは、その蒼い空に舞い上がる木の葉のように自分もその空に吸い込まれるような感覚に捉われた。
その感覚のままに地につけていた身体が空へ向おうとした瞬間、ナルトの身体がピクリと揺れた。
「なにしてんだ。」
視線を空から地に移すとナルトの腕をしっかりとシカマルが掴んでいた。
ナルトの立ち上がろうと宙に浮いていた腰がゆっくりと地に降りた。
「起きてたってばよ、シカマル。」
ナルトの笑顔に騙されるシカマルではない。
シカマルが、ナルトの腕を掴んだままジッとナルトを見つめた。
ナルトは、なかなか本心を他人に見せない。だが、シカマルは確信していた。
最近自分には、少しだけだが隠れた心を見せてくれるようになったと。
二人の間に暫くの沈黙が流れた後、ナルトは観念したのか口を開いた。
「空に・・・近づきたかっただけだってば。」
「それで?」
「それだけだってばよ。」
深い意味は無いとナルトは、また空を見上げた。
シカマルは、掴んだ腕を離さないまま起き上がりナルトの顔を自分の方に向けさせた。
「何だってばよ?」
ふんわりと柔らかく笑う表情は、普段というか皆の前では絶対に見られない表情だ。
その表情が見られるだけでシカマルは、すごく気分が向上する。
そんな表情を自分以外の誰にも見せたくない見せて欲しくないと思う。
まぁ、それはシカマルの一種の独占欲だ。
「お前、もう空持ってるだろ。」
「ふえ?」
首を傾げるナルトの瞳を指差し、シカマルはだるそうにだけど仄かに頬を染めて言った。
「お前の瞳は、いつも吸い込まれそうなほどの蒼色だろうが。」
「・・・自分じゃ見えないってばよ。」
照れ隠しのように言葉を返すナルトの頭をくしゃくしゃと撫でてシカマルは、ナルトの膝に頭を乗せた。
そして、ナルトの頬に手を添えればナルトは、シカマルの顔に近づくように前のめりになる。
「シカマル?」
「俺だけが見えてればいいんだよ。」
「?」
その言葉の意味を理解するのに数分かかったナルトは、とたんに顔を紅くさせた。
「シ・・・シカマル!」
そんなナルトを可愛いと想いつつシカマルは、ナルトの膝の上で睡眠を決め込んだ。
ナルトが視線をシカマルから空へと向けるとやはり空は、蒼く快晴であった。
終了
平成16年4月13日