共鳴
時折、家にこの里にいるはずのない人の気配がする。
「また、来たのかってばよ。」
明らかに不法侵入なのだがナルトが咎めることはない。
その人は、今ではもう定位置となっている場所にひょうたんを背負ったまま腰を下ろしている。
ナルトの家に侵入するためには、まずナルトの無意識に張っている結界を越えなければならない。
「そんなに頻繁に留守にしていいもんなのかってば、我愛羅?」
即ち、すんなりと我愛羅が侵入出来るということは、ナルトが我愛羅に心を砕いているということだ。
我愛羅がいることがさも当たり前のようにナルトは、話しかけながらラフな格好に着替えていく。
そんなナルトをジッと黙って見つめていた我愛羅がボソッと呟いた。
「腹か。」
頻繁に通って我愛羅は、気がついた。
我愛羅の様子が変化したことに気がついたナルトは、着替えながら我愛羅に近づく。
「どうかした?・・・ってなに・・・なんだってば?」
座っている我愛羅の顔を覗き込むナルトのタンクトップを捲り我愛羅は、ナルトの腹に唇を寄せた。
「くすぐったいって。」
腹にかかる我愛羅の吐息にナルトは、身を捩るが腰を両手で押さえられ動けない。
「なにしてんの、我愛羅?」
我愛羅がほんの少しのチャクラをナルトの腹に流し込む。
「四象・・・二重封印か。」
自分のお腹にある我愛羅の頭をナルトは、抱え込んだ。
そして、愛と刻まれた額へと自分の唇を寄せる。
我愛羅は、ナルトの腹に眠る正体を知らない。ナルトも言わないし我愛羅も聞かない。
只、今までの自分の孤独感を互いに重ね合わせていく。
物心つく前から他人から疎まれ身も心も傷つけれられた。
そして、守ってくれるものなどなく、信じられるものは自分だけだった。
「我愛羅?」
「意味は無い。」
その言葉が自分の行動についてなのか今までの生き方なのかは定かではない。
我愛羅は、ナルトをストンと自分の前に座らせた。
そして、ナルトの腰に手を廻し肩に額を乗せた。
「少し眠る。」
我愛羅の眠るという行為は、浅いものでしかない。深く眠ろうものなら全てを奪われてしまう。
ナルトの傍だけだ。浅いのだけれど深く眠れるのは・・・ナルトの傍だけなのだ。
ナルトは、我愛羅の背中に腕を廻し柔らかく我愛羅の身体を倒し自分の膝に我愛羅の頭を乗せた。
今のナルトには、信頼出来る仲間がいる。守りたいものがある。
だからこそ強くもなれるし優しくもなれる。
「一人は、嫌だってばよ。ねぇ、我愛羅。」
かつての自分を見ているかのような錯覚を起こす共鳴がナルトの頭を駈け巡る。
一人の苦しみを暗闇の中の絶望を・・・二人は、知っている。
「俺は、人を愛しいと想っていいのだろうか、うずまきナルト。」
「それは、人として当然の想いだってばよ、我愛羅。」
そして、今日も二人は同じ振動を繰り返し共鳴を深くしていく。
終了
平成16年5月7日