黄昏に染まる蒼
夕焼けは、朝焼けよりもどこか切ない。
どちらも同じ紅のはずなのに。
やはり、沈み往く黄昏は、寂しさを心に落とすのでしょうか?
今日も一人金色の髪を黄昏に染めナルトは、家へと足を動かしていた。
急ぎもせず焦りもせず、只、足を前へと踏み出していた。
遠くで両親と両手を繋いでいる子供がはしゃいでいた。
ナルトは、黄昏の中ゆっくりと前へと進んだ。
子供を迎えに来る母親
母親に駈け寄る子供
温かい家に帰るのだろう。
「ただいま」
「おかえり」
他愛のない言葉の交差が遠くから聞こえては消えていった。
『寂しい?』
きっとナルトは、こう答える。
『俺ってば、全然寂しくないってばよ。』
うそ・ウソ・嘘
髪も身体も心も全て黄昏に染まったナルトは、嘘を吐くのだろう。
夕焼けを見上げたナルトの蒼い眸も黄昏に染まっていた。
そして、黄昏は夕闇に包まれた。
「なんで・・・?」
ナルトが、家に帰ると玄関先に知っている気配があった。
その人は、しゃがみこんで両膝にダラァっと両腕を伸ばして乗せていた。
「んぁ・・・おかえり。」
その人は、顔だけをナルトに向けた。
「おかえり、ナルト。」
呆然とその人を見詰めるナルトに、その人は、再度言葉を差し出した。
「ただいま・・・シカマル。」
ナルトは、照れくさそうにそして、嬉しそうに微笑んだ。
それを見てシカマルは、頬を緩ませながらゆっくりと立ち上がった。
黄昏は、寂しい
夕闇は、もっと寂しい
だけど、この漆黒は誰よりも何よりもナルトに幸せをくれるのだ。
「シカマル、おかえり。」
「あぁ、ただいま、ナルト。」
シカマルに逢うまでナルトは、寂しいなんて思わなかった。
一人がこんなにも耐えられないことだなんて知らなかった。
綺麗な夕焼けがこんなにも切なく寂しいのだと初めて知った。
交じり合う言葉の響きがナルトの黄昏を拭い去っていく。
「寂しかったのか?」
ナルトとシカマルが心通わせてからこんなにも離れていたのは、初めてだった。
シカマルがゆっくりとナルトに歩み寄り自分の方に抱き寄せた。
漆黒の眸が蒼い眸を覗き込んだ。
蒼い眸には、まだ少し黄昏が残存していた。
その眸は、主張している。
隠せない。
隠す必要なんてない。
「寂しかったのか?」
漆黒が黄昏を奪い取っていく。
「・・・寂しかった。」
そっとシカマルの背中に手を回しナルトは、シカマルの胸に擦り寄った。
きっと、明日の夕焼けは、素直に綺麗だと思えるのだろう。
そして、黄昏に染まる蒼を漆黒が包み込んでいくのだろう。
「俺も寂しかった。」
当然の如く漆黒を包み込むのは、闇よりも深い蒼である。
終了
平成16年9月14日