かくれんぼ

 

 

スッと気配を消して身を潜めて静かに待ちわびる

ねぇ、早く俺を見つけて

 

 

皆とワイワイ騒ぐのも好きなナルトだが育った環境からか静かに時間が流れる心地良さも好きだ。

幼い頃と違って、今のナルトには信頼出来る仲間がいる。

仲間と過ごす時間が苦痛になるなんてことは、まず有り得ない。

だけど、時折ナルトは姿を消す。

 

里外に出ているわけでもないのにナルトの姿はおろか気配さえも里から消えるのだ。

 

捜しても探してもさがしてもサガシテモ

――――― 見つからない

 

仲間たちが呼んでも応えない。

その仲間から一つの気配が静かに消えた。

 

 

森の中の大きな木の根元にナルトはいた。

その森に人は、ほとんど近寄らない。ナルトは、森に愛されている。

この森に入るとナルトの気配は、自然と隠される。

普通の人が迷い込めば、その森から出るのは至難の業だ。

だがナルトが迷うことはない。

ナルトは、幼い頃から一人になりたい時は必ずこの森に来ていた。

この森がナルトの心を守り癒してくれていた。

 

なのに

一人になりたかったはずなのに、いつの頃からか気がつくと傍にいることが当たり前になってた。

 

ナルトは、近づいてくる気配に気がついていた。

だけど、木々の広く伸びた枝に生える葉と葉の間から零れる柔らかい陽射しが気持ち良くて眸を開けなかった。

気配は、ナルトの目の前で止まり静かにナルトの横に移動した。

一人になりたいと思っているのにその気配だけは、いつも傍にいることを許してしまう。

「また、見つけられちゃった。」

ナルトが眸を閉じたままニヘラと笑うと、隣の気配も微かに揺れた。

 

ナルトがこの森によく来るといっても、いつも同じ場所にいるわけではない。

なのに、いつも見つけてくれる。

忍者として成長して忙しいはずなのに足を運んでくれる。

 

一定の間隔でナルトの金糸を梳く心地良さにナルトは、眸を開けて視線を移した。

「もうスネてないの?」

ナルトがフワリと笑えばフィっと視線を外された。どうやら、まだ少しだけスネているらしい。

ナルトは、ニッコリと笑って起き上がった。

「シィノ。」

ナルトは、シノの顔を覗き込んだ。

「こんだけ顔隠してたら勿体ないってば、シノってば格好良いのに。」

数年前よりも確実に外気に晒されている身体の部分が減っている。

当然なぜシノがそのような格好をしてるのかをナルトは知っている。

だけど仕方ないと思う反面、勿体と思うのも本当だ。

「俺、シノに声かけられる前からシノがそこにいるのわかってた。」

ずっと傍にいてくれた気配なのだ。わからないはずがない。

いつだって自分を探し出してくれていた存在を忘れるはずがない。

「声かけてもらえて嬉しかった。だから、ちょっとだけ照れてたってばよ。」

「知っている。」

シノは、目の前にいるナルトに腕を伸ばしギュウッと抱き締めた。

「久しぶりだ。」

数年ぶりのナルトの感触を確かめるようにシノは、ナルトを抱き締める。

それに応えるようにナルトもシノに抱きつき、そして擦り寄る。

 

この後、二人には別々の任務が待っている。

こうしていられるのも後数分。

 

 

今度は、俺がシノを見つけるから。

だから、俺を待っていて。

 

あぁ、待つさ。

だが俺は隠れるよりも見つけるほうが得意なんだ。

 

俺が見つけたいんだから待っててよ。

 

あぁ、待つとしよう。

 

終了

平成18420

きっとシノは、待たずに見つけると思う。