野点(のだて) ネジ×ナルト

 

実は、意外なようだがナルトはお茶を点てるのが好きだ。

心が落ち着いて穏やかになるのだそうだ。

「ネジ、『茶の湯』するんだけど飲む?」

「いただこう。」

ナルトは、その返事を聞いて準備を始めた。

「今日は、天気が良いから外で点てるってばよ。」

道具を両手に抱え、ネジには敷物とお茶菓子を持ってもらう。

場所は、いきつけの禁忌の森だ。

敷物を敷き、直射日光を遮るために和紙を貼り付けた柄の長い傘を立てた。

青々とした葉を芽吹く木々が柔らかい陽射しをより穏やかにする。

「今日は、傘は必要ないのではないか?」

「ネジってばわかってないってば。この雰囲気が良いんだって。」

ナルトが『茶の湯』の準備をする間ネジは、正座をしてその様子を眺めている。

ナルトに初めて『茶の湯』に誘われた時ネジは驚いた。

『茶の湯』=『静寂』という印象がネジの頭にあったからだ。

だが、今となってはとても馴染み深いものとなっている。

ナルトは、お茶を点てている間は一言も発しない。

その前の袱紗さばきもかなりのものだ。

『綺麗なものだな。』

ネジは、何度見てもその光景に見惚れている。

―――シャカ・シャカ・シャカ

静かな森に静かに響く音が心地良い。

 

 

お抹茶には、『薄茶』と『濃茶』がある。ナルトが点てるのは、主に『薄茶』だ。

「なぜだ?」

「だって、ネジにしか点てないってばよ?」

「?」

「『濃茶』は、皆で回して飲むんだ。」

「そうなのか。」

「俺は、ネジにしか点てないから『薄茶』専門なんだってばよ。」

しかし、『薄茶』にしろ『濃茶』にしろ『茶の湯』というのは難しいものだ。

そんなことよりも『ネジにしか』その言葉にネジの表情が緩やかになる。

 

 

お茶菓子をいただき、ナルトが点てたお茶をいただく。

空を見上げれば透きとおった柔らかい蒼がナルトの眸を連想させる。

『穏やかだな。』

ネジは、改めて思った。

ナルトとこうして深く付き合うようになってネジの世界観は変わった。

綺麗なものは、素直に綺麗だと思えるようになった。

楽しい刻を持てるようになった。

「ナルト。」

「なに?」

「お前と出会えて良かった。」

真剣な眸で真剣な口調。

いきなりの言葉にナルトは、頬を染めながら微笑んだ。

「俺も、ネジに出会えて良かったってばよ。」

「そうか。」

「そうだってば。」

二人して穏やかな森の中で再確認をした。

 

「ネジ、まだ飲む?」

「いただこう。」

 

そうして静かな刻は、穏やかに過ぎていく。

 

終了