暇 シノ×ナルト

 

 

ナルトが、何気なく歩いていると目の端に良く知る人を捉えた。

別にやることも決めてなかったので、ナルトはその人を尾行することにした。

「忍者は追跡も大事だってばよ。」

相手に気付かれないように気配を消してこっそりと後をつける。

 

 

相手は、迷うことなくある場所に向って足を進めていた。

『この方向って』

ナルトの考えは、当たっていた。

『やっぱり此処だってば。』

相手が着いた場所は、小さな森だった。

相手が森に入るのを確認してナルトも足早にその森に入った。

「あれ?」

辺りを見渡すがいない。

気配を感じようとするが感じられない。

「あれ、あれあれ?」

「ナルト。」

不意に真後ろからしかも至近距離でその人の声がした。

「うわぁ!」

驚いて思わずナルトは、叫んでしまった。

後を振り向くとその人は、かなり迷惑そうな顔をしていた。

「こんな至近距離でそんな声を出すな。」

不機嫌極まりない声だ。

「ご、ごめんってばよ。」

「で、なんの用だ。」

「へぇっ?」

「ずっと、ついて来ていただろう。」

「別に用なんてないってばよ。」

「用もないのについて来ていたのか。」

「おぅ、シノが何処に行くのか気になっただけだってばよ。」

「声をかければいいものを。」

シノは、横を向いてフゥっとワザとらしく溜息を吐いた。

「むぅ、いいじゃん。修行の一環だってばよ。」

シノの呆れた態度にナルトがムキィと反論する。

気付かれている時点でもはや修行とは言えないだろう。

「まぁ、いい。」

シノは、ナルトに近づき金色の頭をクシャっと撫でた。

「どうせ、暇なのだろう。」

ナルトは、コクンと頷いた。

そんなナルトにシノの顔が緩む。まぁ、見た目は、そんなに変らないが。

「俺は、蟲を探す。邪魔をしないと誓えるなら傍にいろ。」

「本当、傍にいてもいいの?」

「あぁ、邪魔しないならな。」

「うん、俺ってば絶対シノの邪魔しないってばよ。」

ナルトにとって誰かの傍にいられることは、この上なく嬉しいことなのだ。

 

ナルトは、シノの邪魔にならないように気配を落ち着かせてずっとシノを見ていた。

これほどまでに、シノを見るのは初めてではないだろうか。

蟲を探す真剣な眼差しに魅入ってしまう。

「ナルト。」

不意にその眸で振り向かれてナルトは、慌ててしまった。

「な、なんだってばよ。」

「そろそろ、帰るぞ。」

「もう、そんな時間だってば。」

ナルトが辺りを見渡すともうすっかり夕暮れになっていた。

ナルトの金色もオレンジ色に染まっている。もちろんシノの黒色もだ。

「また。」

「ん?」

「また、一緒に来るか?」

シノの思いがけない言葉にナルトは、目を見開いた。

「嫌か?」

「嫌じゃないってばよ。シノこそ、いいの?」

「俺は、ナルトが傍にいる方がいい。」

シノの言葉にナルトの頬は、朱色に染まる。

『今が夕暮れで良かったってばよ。』

そう思いながらナルトは、微笑んだ。

「俺もシノの傍にいられるの嬉しいってばよ。」

「なら、決定だな。」

「おぅ!」

そうして、二人は影を長く伸ばして帰路についた。

 

 

終了