信頼 我愛羅×ナルト

 

 

我愛羅は、ふと作業の手を止め視線を前に向けた。

「よぉ。」

目の前には、ここにいるはずの無い者がいた。

「ちゃんと眠れてるか?」

風影である我愛羅にそんな口をきく者は、砂隠れの里にはいない。

「なんの用だ。」

「用がないと来ちゃいけないってば?」

薄暗い執務室でも良く映える金色の髪が、楽しそうに揺れていた。

「もっと、守りを強固しないとな。」

我愛羅は、自然と窓から自分が守るべき里を見渡した。

「で、ちゃんと眠れてる?」

先程の質問をしつこく問いかけてくる。

「いくらアレが此処からいなくなったからといって、長年の習慣は変わらん。」

「そっかぁ。」

もう、陽が沈むのか金色が徐々に黄昏に染まっていっていた。

「我愛羅。」

静かな呼びかけに我愛羅は、返事をしない代わりに歩み寄った。

「ナルト。」

両手を広げて我愛羅を迎え入れるナルトの肩に我愛羅は、額を乗せた。

そして、ナルトは我愛羅を包み込み、ギュッと抱き締めた。

 

我愛羅の中にアレがいなくなった今も我愛羅は、安眠出来ていない。

だけど、アレが中にいた頃から、安眠出来る時があった。

それは、そうナルトが傍にいた時だ。

そして、今ナルトの温もりが我愛羅を包み込んでいる。

なぜだか、それだけで我愛羅は身体の力が抜け安心することが出来た。

「生きてくれてありがとう。」

ナルトは、自分の腕の中の身体の力の抜けた温もりにそう呟いた。

どうしても、死んで欲しくなかった。

例えそれが自分勝手な願いだったとしても生きていて欲しかった。

「大丈夫。我愛羅、お前は皆に愛されてるよ。」

それは、我愛羅が自ら道を切り開いてきた結果だ。

 

我愛羅が、目を覚ますと自分の寝室にいた。

自分の髪を梳く手が心地良くて、まだ夢心地の状態だ。

何の夢も見ず安眠出来たのは、いつ振りだろうか。

そんなのは、わかりきっていた。

この前、ナルトが砂隠れの里に来て以来だ。もう、それも随分と前の話だ。

我愛羅は、ソッと腕を伸ばしナルトの頬に手で触れた。

「まだ時間あるから。」

ナルトは、柔らかく唇で我愛羅の額に触れた。

我愛羅は、眸を閉じたくなかった。

きっと次に目を覚ました時には、ナルトはいない。

離れたくないとばかりに我愛羅は、ナルトに抱きついた。

そんな我愛羅にナルトは、柔らかく慈愛を込めて微笑む。

そして、そのまま二人はベッドへと倒れこんだ。

我愛羅は、ナルトを強く抱き締めたまま既に夢の中だ。

「温もりに安心出来るのは、お互い様だな。」

我愛羅の腕から抜け出すのは、容易かったがナルトは眸を閉じた。

まだ、少し時間はある。

ナルトも我愛羅の温もりの中で眠りについた。

 

そして我愛羅が目覚めた時、温もりを残したままナルトの姿は消えていた。

 

そうして、また浅い眠りが続くことに苦笑しながら我愛羅は、職務に赴いた。

 

 

終了