不安 イタチ×ナルト

 

 

「イタチさん。」

「なんだい、ナルト君。」

ナルトを自分の足の間に座らせてイタチは、ご満悦だった。

ナルトは、身体を反転させてイタチと向かい合う。

当然イタチの手は、ナルトの腰に絡まりついている。

「なんで、此処にいるの?」

「ひどい、ナルト君。」

ナルトの言葉に目頭を押さえるイタチだが、一滴おろか眸が潤んでもいない。

そもそもイタチは、木の葉隠れの里を抜けているのだ。

『抜け忍』なのだ。追われる身なのだ。

「危ないよ。」

「ナルト君は、俺が易々と捕まるなんて思ってないだろう。」

コクンとナルトは、頷いた。

「なら・・・」

「でも!絶対なんてあり得ない。」

「ナルト君は、俺と里、どっちが大事?」

なぜ今その質問なのか。

ナルトは、イタチの服をギュウッと掴みずっとイタチから視線を逸らさない。

『良い眸だ』

揺ぎ無い意志がその眸から否応なしに伝わってくる。

イタチは、ナルトと出会った瞬間からその眸を自分に向けていたかった。

「イタチさん。」

「ん?」

「俺は、火影になる。」

それは、幼い頃からのナルトの夢であり目標でもあった。

「そうだね。」

イタチは、変わらない意志に苦笑してナルトの柔らかい金糸を撫でた。

「絶対なるから。なってみせるから。」

「うん。」

「その時は、この里に戻ってきて。」

ナルトの言葉に、ほとんど驚くことのないイタチの眸が見開いた。

「本気で言ってる?」

勿論、ナルトの眸を見ればそれが本気だとわかる。

だが、イタチは聞かずにはおれなかったのだ。

「片時も俺の傍から離れないで。」

イタチは、強い。強いが故にいつも孤独が纏わりついていた。

その孤独感は、ナルトのモノと少し似ていた。

だが、それは似て非なるものなのだ。

 

ナルトは、自分の意志に関係のない孤独。

イタチは、自分の意志に関係のある孤独。

 

それでも孤独は、孤独なのだろう。

 

揺ぎ無いナルトの眸が、微かに揺れた。

「離れていると心配で不安だから。」

ナルトは、本当は此処にイタチがいる理由を知っている。

ナルトの不安を和らげてくれているのだ。

 

ナルトにとってイタチは、里と同様いやそれ以上に大事な存在。

だけど、里を捨てることなんてナルトには、出来ない。

 

イタチにとってナルトは、里以上に大事な存在。

だから、イタチは里を一族を捨てた。

 

それでナルトを守れると思っていた。そう信じていた。

今でも、その想いは変わらない。

『ナルトから離れてどう守るというのだ』

ナルトを連れ出すのは、自分だと思っていた。

『不甲斐ない自分の力に嫌気がさす』

なのに、連れ戻されるとは考えてもいなかったのだ。

『ずっと、傍にいてもいい・・・のか』

イタチは、その時を思うと無性に胸がざわついた。

「そうなるといいね。」

ふわりと笑う表情は、ナルトにだけ見せる特有のものだ。

「なるよ。」

ナルトもイタチだけに見せる表情で笑った。

「ありがとう。」

傍にいることを許してくれて、その言葉をイタチは口にはしなかった。

 

 

終了