花はいつか枯れゆく、

枯れない花などありはしない。

 

存在するなら、それは狂っているのだろう。

 

 

いつものようにネジは、教室に足を踏み入れた。

普段どおりの教室内、ネジは、自分の席に着き教室を見渡した。

『・・・本当にいた。』

ネジの視線の先には、なにやら騒いでいる『うずまきナルト』がいた。

『本当に同一人物なのだろうか?』

ネジがそう思うのも当然のことだろう。

先日、出逢った時のような静けさがまったくそのナルトからネジは感じとれなかった。

だが、次の瞬間そのナルトと先日のナルトが同一人物であると判断された。

なぜなら、ナルトがネジの視線に深く蒼い眸で応え声も出さず誰にも気づかれずネジに言葉を

送ったからだ。

 

『今日の放課後、禁忌の森にて待つ。』

 

授業も全て終了しネジは、いつものように一人教室を出た。

そして、向う場所は禁忌の森だ。

ネジが教室を出る時、まだナルトは教室にいた。

窓際の席で日差しが心地良いのか気配をあらわに寝ていた。

そんなナルトにネジは、怪訝な眸を向けたがそれにナルトが応えるわけもなくネジは、教室を

出たのだ。

 

当然ネジが禁忌の森にその場所に着いた時にナルトは・・・いた。

「な・・・。」

呆然とナルトを見るネジにナルトは、笑っている。

「ネジでもそんな顔するんだ。」

いつも冷静な表情を崩さないネジのその表情にナルトは、すごく楽しそうだ。

「お前・・・寝てなかったか?」

「ん?寝てたよ。」

授業聞いてもつまんないしとナルトは、軽く伸びをして木から飛び降りた。

ふわりと舞い降りたナルトからは、気配が感じられない。

寝ていたナルトとは、まるで別人だ。

「面白い。」

ネジは、心の底からそう思った。

強さを求めるネジにそれだけでは駄目だと説いたナルト。

授業の内容がつまらないと眠っていたナルト。

騒ぐだけ騒ぐ落ち着かないナルト。

そして、静けさを身に纏うナルト。

出逢ってから今日まで数日しか経っていないというのにネジは、たくさんのナルトを見た。

「ナルト。」

「ん?」

「お前は、どうして強くなった。」

その質問は、愚問であろう。

ナルトは、強くならなければいけなかった。

それと同時に何も出来ない自分を作り上げていかなければならなかった。

「さぁ。」

曖昧な返事は、その質問に応える気がないということ。

「応えられないのか?」

それでも食い下がってくるネジにナルトは、ふわりと笑った。

「・・・ネジが強くなろうとしている理由とは違うってことははっきりと言えるってば

よ。」

そして、その言葉を口にしてナルトはネジに悟られぬよう苦笑した。

『まぁ、俺も大概だろうけど。』

己の運命を受け入れた時も強くなろうと決意した時もナルトは、一人だった。

一人が故に強くならなければ生きていけなかった。

ナルトは、現実から眸を逸らさずただただ狂ったように鮮やかに強さを求めてきた。

「どういうことだ。それは、これ以上俺が強くなれないということか。」

ネジが力任せに傍にそびえ立つ木に自分の握り拳を叩きつけた。

 

―――バサバサバサァ・・・

 

その振動で木の葉が舞い鳥たちが飛びたっていく。

強さという鎖に囚われているネジにナルトは、歩み寄り小さな両手でネジの頬を包んだ。

白い眸が苛立ちの色を現している。

そして、蒼い眸には哀しみの色が現れていた。

『そんな鎖に繋がれるのは、俺だけでいい。』

ネジに自分のような鎖に囚われて欲しくないと願うナルトは、説く。

「ネジ・・・ネジは、強くなれるよ。だけど、強くなるという誇りをよく考えて。」

目先の哀しみに囚われて強さの意味を強くなろうとする意志を間違わないで。

「強くなって、それから自分がどうしたいのかを考えて。」

「・・・いくら強くなってもどうしようも出来ないこともある。」

ナルトの視線から眸を逸らしネジは、身体から力を抜いた。

「それでも、ネジは強くあろうとするんだろう?」

「あぁ。」

「ネジ、これだけは覚えておいて。強さだけを求めても強くなれないってばよ。」

「先日も聞いたな。」

今、ネジの目の前にいるナルトは、強い。

そのナルトがそう言っているのだからそうなのだろう。

「・・・俺は、どうすればいい。」

呟くようにかぼそい声でネジは、言葉を吐き捨てる。

今にも崩れ落ちそうなネジをナルトは、優しく抱きとめた。

「強さの本質は、自分で見つけないと意味がないんだ。」

長く流れる黒髪を梳きながらナルトは、囁く。

「ネジは、もっと強くなれる。この俺が保証するってばよ。」

ナルトの手が心地良いのかネジは、されるがままだ。

「その過程の中でネジ自身に強さの本質に気がついて・・・知って欲しいってば。」

「お前が導いてくれるのか?」

「だから、最初から一緒に修行しようって言ってるだろ。」

ナルトは、さらさらと流れる髪に唇を落とした。

そして、幼子を落ちつかせるかのように頭や背中を撫でていく。

『心地良い。』

そんな穏やかな雰囲気は、久しぶりでネジはいかに自分が今まで余裕がなかったのかを知る。

木々のざわめきや流れる風それら全てが穏やかに二人を包んでいた。

 

少し精神が安定したネジに安堵しながらナルトは、想う。

『ネジならきっと大丈夫。』

全ての鎖を自分だけに繋げようと考えるあたりナルトは、優しさ故に狂っているのかもしれない。

『誰にも愛されるはずのない自分が誰かを愛せるはずがない。』

そう想い込んで強さを求めても人を誰かを愛しいと想うのが現実なのだ。

誰かに愛され自分も誰かを愛しく想いたい。

「その時俺は、もっと強くなれるかな?」

そんなこと有り得ないかと苦笑しながらナルトは、木々の間から見える夕暮れ空を見上げた。

ナルトは、誰かを愛してもきっと自分は、誰にも愛されないと想っている。

 

枯れて散るのが花ならば・・・

俺は、枯れない花になろう。

 

俺は、狂ったように咲き続けてやる。

 

 

終了

平成16123