と影  

 

 

三代目火影は、ナルトの一人暮らしを許可する代わりに条件を出した。

 

『里の中の特殊な能力を持つ一族の子供たちが一斉にアカデミーに入学する時期が

くる。その子たちよりも数年早く入学して、その子たちと一緒に卒業すること』

 

それが、その条件である。

 

この条件は、三代目火影の考えがあってのことだ。

まず、ナルトは自分と同世代くらいの子供たちに慣れなくてはいけない。そして、

ナルトに子供たちの中で自分がどういった立場になるかという現実をより早くから

受け止めて欲しかったのである。そして、なぜ、里の中の特別な子供たちをナルト

に近づけさせたいのか。それは、将来この里を支えるであろうその子供たち自身の

眸でナルトを見て知って欲しかったからなのだ。

 

三代目火影の思惑を知ってか知らずかナルトは、その条件を承諾した。

 

ナルトが火影の邸宅を出る日―――

三代目火影や奥方そして、ナルトを愛しいと想っている者たちが右往左往していた。

「ナルト、あれと・・・これと・・・それも持っていきなさい。」

「(そんなの)いらないってばよ。」

「ナルト、荷物運んでやるぞ。」

「ありがとう、でも、もう運び終わってるってばよ。」

「新しい家まで一緒に行こうか?」

「一人で行けるってばよ。」

うろたえる大人たちに向ける笑顔は、柔らかく優しげでどこか儚げで大人たちは、

より心配するのである。ナルトは、自分を愛しく想っているくれている人・必要だ

と思ってくれている人たちには、本当の笑顔を見せる。本人は、無自覚なのだろう。

里人やナルトの表面しか見ようとしない者に対してナルトは、元気な笑顔を見せる

のだが・・・その笑顔も本当なのだが・・・違うのだ。

「大丈夫だってばよ。もう、皆心配性過ぎ。」

ナルトが本当の笑顔を魅せてくれたから、大人たちは黙って見送ることにした。

「ナルト。」

穏やかに静かにナルトの名を呼んだのは、三代目火影の奥方であった。幼い頃、里

人に傷つけられたナルトを包み込んだ『母』のような存在の人。ナルトの一番近く

でその成長を見守ってきた人でもある。その人の優しい慈愛に満ちた眸は、ナルト

をすごく安心させる。だけど、今その眸は、どこか寂しげだ。

「ナルト。」

「はい。」

「一度やると決めた以上最後まで諦めずやり遂げるのですよ。」

「はい。」

奥方は、優しさと強さをあわせ持つ人だ。心の中は、ナルトのことが心配で堪らな

いのにナルトに前に進みなさいと説く。ナルトもそれを理解しているうえで返事を

返す。

「・・・もう行くってばよ。」

地面に向けていた顔をナルトは、勢いよく皆に向けた。

「いってらっしゃい。」

その言葉は、いつでもここに帰ってきてもいいという言葉だ。

「いってきます。」

ナルトの背には、小さな荷物そして、手には大切に育てている観葉植物が揺れていた。

 

 

続く