と影  

 

 

今日も元気に騒がしくナルトは、教室に入ってくる。

「おはよー、だってばよ。」

ナルト特有の語尾が無意味のように付け加えられている。大抵の子供がそんなナルトを

無視する中きまっていつも同じ子供たちがナルトと挨拶を交わしていく。

「おはよー、キバ。」

「はよう・・・お前朝からいつもうるせぇ。」

挨拶を交わすと同時に悪態を吐くのは、いつも忍犬である赤丸を頭に乗せている犬塚キ

バである。シカマルの視点で見るとこの二人が揃うとなにかと五月蝿いらしい。

キバが人差し指でナルトの眉間を押さえるとナルトは、蒼い眸をキバからそらすことな

く両頬をプクゥ〜っと膨らませた。

「キバにそれ言われたくないってば。」

キバの頬が仄かに紅いのは気のせいではないだろう。

―――ぷしゅ〜

いきなりナルトの膨らんだ両頬を片手でしぼませたのは、サングラスを常にかけている

油女シノである。

「シノ、おはよう。」

「あぁ・・・おはよう。」

シノは、それだけを告げるとナルトのフワフワの明るい髪がある頭を撫でた。シノが自

分から他人に触るのは大変珍しいことでそれを初めて見た時シカマルは、かなり驚いた。

まぁ、シカマル以外の人は、それ以上に驚いていたみたいだ。それが、挨拶の後の日課

なのか、ナルトは素直にシノに頭を撫でられている。

「邪魔だ。」

そして、いつもここで登場するのがうちは一族の生き残りであるうちはサスケである。

ナルトのすぐ真後ろでそう呟くとシノがソッとナルトを自分の方へと引き寄せ道を開け

る。

「おはよ〜だってば、サスケ。」

シカマルはナルトの言動と行動からナルトは、サスケを嫌いなのだと思っていた。だが、

ナルトはサスケにもにっこりと笑って挨拶をする。どうやら嫌いでは、ないらしい。

「おはよう。」

シノとナルトの横を通り過ぎながらサスケは、正面を向いたままぶっきらぼうにナルト

に挨拶を返す。

 

ちなみに教室に入る前にナルトは、数人のくノ一とも挨拶を交わす。

まぁ、これは後日話をしよう。

 

そんなこんなでナルトは、自分の席へと足を向わせる。

「おはよ〜、チョウジ。」

「おはよ〜(モグモグ)」

チョウジと挨拶を交わすとナルトは、フニャ〜と笑いそのままシカマルの方を見た。

「・・・起きてる。」

「起きてちゃわりぃかよ。」

先日のことがあって、シカマルはもう朝寝たふりをするのを止めた。チョウジが言って

いた『勿体無い』の意味を知ってしまったから余計だろう。ナルトは、自分と挨拶を交

わしてくれる人に対していつもと違う笑顔を見せるのだ。その笑顔は、シカマルが先日

見た笑顔となんだか違うのだがとても和やかに嬉しそうに笑うのだ。ナルトと挨拶を交

わさない者には見れない表情だ。はっきりいうとそういう人たちは、ナルトを見ようと

もしていない。本当に勿体無いことしていると思う。

「今日・・・雨降るかも。」

晴れ渡る空に眸を向けながらナルトは、雨具持ってきてないと呟いた。

「あんだよ・・・それ。」

空に向けていた蒼い眸をシカマルに向けナルトが笑った。

「言葉通りだってばよ。」

ナルトの言葉にわざとらしく溜息を面倒くさそうに吐きながらシカマルは、口の端を上

げた。

「言ってろ。」

「ハハッ、シカマルおはよう。」

「はよぅ・・・ナルト。」

席に着くナルトを眺めながらシカマルは、考えていた。

 

『こいつって実は、単に騒がしいだけのドベじゃねぇんじゃねぇの。』

 

無意識に張られているという結界といい先日二人で帰った時のナルトの雰囲気といい、

シカマルの眸には明らかにドベで騒がしいだけのうずまきナルトではないナルトが映し

出されていたのだ。

面白くないアカデミーでシカマルは、初めて興味が沸く者を見つけた。

 

 

続く