に呑まれるに照らされる闇  

 

 

里を建て直し、里人を奮起させるので必死で気がつけないでいた。

「大変です、火影様。」

「どうした。」

「あの子が・・・ナルトがいないです。」

ナルトに九尾が封印されたことは、今生きている全ての里人が知っていた。

それは、里人を安心させる為であり決してナルトを傷つけるためにしたことではない。

しかし、現実は、安易に事を運ばせてくれなかった。

 

大事な人を無くした人の気持ちは、計り知れない程の狂気を伴う。

憎しみが冷静な判断を狂わし一つの愚考に辿り着く。

 

―――――あの子に九尾が封印された

―――――あの子の中で九尾が生きている

―――――あの子の所為で里がこんなにも荒れ果てた

―――――あの子の所為で大切な人がいなくなった

―――――挙句あの子の所為で四代目までもいなくなった

 

―――――あの子が九尾なのだ

 

火影の側近である暗部が赤ん坊のナルトを見つけたのはその数日後

ナルトは、禁忌の森で置き去りにされていた。

生きているのが不思議だった。

 

―――――あの子は、化け物だ

 

噂というものは、瞬時に駈け巡る。

里人の愚考は、増徴し赤ん坊であるナルトに向けられる視線は、まさに畏怖と憎悪の念が

込められていた。

 

三代目は、里をそこに生きる人を守りたかった。

そして、ナルトも守りたかった・・・それは、本当。

だから、宣言した。

 

―――――ナルトの中にいる九尾について一切に口にしてはならぬ

―――――ナルトに手を下す者には、それなりの処罰を与える

 

それでも、里の復興に忙しく三代目の目を欺く者は、いた。

 

何度も何度もナルトは、攫われる。

 

ナルトのお守りを任された者は、何をしているのか。

次々と代わるお守り役・・・それでもナルトは、連れ去られる。

 

三代目は、忍の里としての復興に必死で気がつけない。

より信頼出来る者たちは、弱っている木の葉に迫る他国の侵入を防ぐ為の任務に就かせて

いた。

 

どのお守り役の者のナルトを見る眸は、深い闇に覆われていたのだ。

 

産まれてすぐに九尾を封印され慈しまれるはずの赤ん坊は、闇に祝福された。

泣いても泣いても泣いても・・・・泣いても

ミルクは、与えられず

抱き上げてももらえず

挙句に煩いと殴られる

何も知らないわからない赤ん坊は、ただただ泣くばかり

 

「ナルトは、元気に育っておるか。」

「えぇ、それはもう。」

 

信頼していた・・・お守り役の言葉を信じ三代目は里の復興のことだけを考えた。

 

泣いている赤ん坊の声など誰の耳にも聞こえない。

闇に溶けていく。

 

それでも、ナルトは生きている。

 

「器に死なれては、九尾が出てきてしまうからな。」

 

必要最小限の栄養を与え、お守り役たちは、ナルトを生かした。

 

 

泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて・・・泣いても誰もいない。

笑いかけてくれる人もいない。

話しかけてくれる人もいない。

向けられるのは、畏怖と憎悪の念だけだった。

 

それでも、ナルトは生きた・・・否、生かされていた。

 

終了

 

序章