欲張り

 

 

ロビンは、温かな陽射しの中、本を片手にぼんやりとルフィを眺めていた。

「どうしました?」

そんなロビンに声をかけたのは、ブルックだった。

温かな陽射しの中では、骨とアフロもなぜだかさわやかに見える。

「ルフィさんがどうかされましたか?」

ブルックもロビンと同じように視線をルフィに向けた。

「細いな、って思ってたの」

「ヨホホホッ、確かにルフィさんは細いですね。私ほどではありませんが、だって私」

「骨ですものね」

言いたいことをロビンに言われてしまったブルックだが、そんなことは気にしない。

「重くないんですって」

「はい?」

「自分の夢も私たちの夢も、全部あの小さな背に乗ってる」

ロビンとブルックの視線の先のルフィは、遠くを嬉しそうに眺めていた。

 

 

パラソルの下で本を読んでいるロビンの傍でルフィは、釣りをしていた。

そのルフィの背中を見つめながらロビンは、思っていたことを口にしたのだ。

「ねぇ、ルフィ」

「んぁ、なんだロビン」

顔だけをロビンに向けるルフィの姿は、どう見ても強くは見えない。

その身体のどこにあの強さがあるのか。

「重くない?」

「?」

首を傾げるルフィは、思わず頭を撫でたくなるほど可愛い。

ロビンは、ルフィの温かい黒髪を撫でながら話を続けた。

「仲間が増える度に貴方の抱えるものが増えるのよ」

ロビンの言葉を考えているのかルフィは、少し黙った後に口を開いた。

「全然、重くなんかないぞ」

「本当に?」

ルフィは、身体もロビンの方に向けて座り直した。

「仲間なんだから重いわけないだろ」

太陽のような笑顔でルフィは、そう言い切った。

当たり前だけど、なかなか口には出せない言葉をルフィは当たり前のように口にする。

「ふふっ、強いのね」

「?」

ロビンの言葉の意味がよくわからなかったルフィは、また可愛らしく首を傾げた。

 

 

ルフィを見つめながらロビンは、柔らかい表情を見せていた。

「私たちの夢は、自分の夢でもあるんですって」

骨だからわからないがブルックの表情も緩んでいる。

「ホッ、ホッ、ホッ、ルフィさんらしいですね」

「えぇ、そうね。それに自分は、欲張りなんですって」

「ほぉ、欲張りですか」

「欲張りだから、自分の夢も私たちの夢も、そして仲間も手放さないんだそうよ」

「これまた、ルフィさんらしい」

「えぇ、本当にそうね」

ロビンは、開いていた本を静かに閉じた。

「いつか」

「はい?」

「いつかルフィがなにかに押し潰されそうになる時、私は支えたい」

「私もです」

「ルフィの夢は、私たちの夢でもあるんですもの、ね」

「ヨホホホッ、本当にそうです」

ロビンとブルックは、穏やかな空気の中で微笑み合った。

 

「おぉ〜い。ロビンにブルック。でっけぇ、魚がいんぞぉ」

 

満面の笑顔で二人を呼ぶルフィに応えるように二人は、立ち上がった。

「ルフィの笑顔を守りたいと思う私は、欲張りかしら」

「ホッホッホッ、そうなるとこの船に乗っている全員が欲張りということになりますねぇ」

ロビンは、同感とばかりに頬を緩めた。

 

終了

平成22422