温かい陽射しが零れる縁側に座りわぴこは、空を見上げた。
「ポカポカであったかぁ〜い。」
両足をブラブラさせながらわぴこはその心地良さにウトウトしている。
―――パタン
そして、そのまま後にゆっくりと倒れて温かな陽射しが降り注ぐ中眠りについた。
―――ガラガラ
ちょうどその時、玄関の方では戸が開く音が響いていた。
「こいつは、本当にどこでも寝るな。」
わぴこの傍に立ったのは、お隣に住む葵だった。
「まぁ、この天気だからな。」
縁側から身を乗り出し空を仰ぐと真っ青な空が広がっている。
そして、庭に植えられた木々の新緑によってちょうど良い陽射しになっている。
「う〜・・・ん、んにゃ・・・」
軽く身じろぐわぴこの姿に葵は、ドキッとした。
わぴこに甘えるように数匹の猫がわぴこに寄り添っている。
もちろん、その猫たちにドキッとしたわけではない。
短いスカートからわぴこの太股が半分以上見えていたのだ。
外で元気に遊び回っているにも関わらずわぴこの肌は、透き通るように白い。
その白い肌に温かな陽射しが舞い降りているのだ。
その白い肌はどんなに滑らかだろう。
どんな風に手に吸い付くのだろう。
葵は、ぶんぶんと顔を横に振った。
「相変わらず無防備だな・・・こいつは。」
そして、そこから目をそらしそのまま部屋の中に入りそしてすぐに戻って来た。
手には、タオルケットを持っていた。温かいといっても時折冷たい風も吹く。
葵は、わぴこの身体にそれをかけ自分もわぴこの隣で横になった。
そんなに大きくないタオルケットを自分にもかけわぴこを自分の腕に抱き込む。
わぴこにしてみれば葵の腕枕
葵にしてみればわぴこは抱き枕
―――ニャッ
周りにいた猫たちもそれに合わせて体制を変える。
「ふにゃ・・・」
葵がわぴこを抱き込み眠りにつこうとしたその時、わぴこの身が少し揺れた。
『起きたか?』
葵がわぴこを覗き込むと「スース―」と寝息を立てていた。
わぴこの緋色の髪を梳きながら葵は、ソッと髪に唇を寄せる。
「お日様の匂いがするな。」
わぴこは、いつも元気だけど葵に抱き締められると大人しくなる。
「葵ちゃんにギュッってされるの大好き。」
それが理由なんだそうだ。
そして、わぴこは抱き締められたら抱き締め返す。
「わぴこね。葵ちゃんにギュッってするのも大好きなんだよ。」
要するに抱き締め合うのが好きだということだ。
温かい陽射しとわぴこの体温それらの心地良さが葵を眠りへと誘う。
只今、二人でのんびり睡眠中
わぴこが目を覚ました時、葵はまだ眠っていた。
「うにゃ〜・・・葵ちゃんだぁ。」
目を覚ましたはいいがわぴこは、葵に抱き締められ起き上がれないでいた。
まぁ、起きる気など更々ないのだろう。
葵の胸に擦り寄り、より身体を密着させる。
「へへぇ〜葵ちゃんの匂いだ。」
ふと視線を上に向けると葵の髪が陽射しを浴びてキラキラと光っていた。
「綺麗。」
わぴこは、葵の金色の髪が好きだ。そして、優しい青い眸が好きだ。
「起きないかな。」
今は、その眸は閉じられている。
無理やり起こしては怒られるのは、実戦済みだ。
先日、口と鼻を押さえて起こしたらすごい怒られた。
「ふぁ〜・・・ん・・・眠い。」
あれこれ考えている内にわぴこに再度睡魔が訪れた。
そもそも葵に抱き締められていてわぴこは、身動きがとれない状態なのだ。
温かい陽射しと葵の体温を身体に感じながらわぴこは、再度眠りについた。
次に葵が起きたのだが、心地良さにまた眠りについた。
交互に目を覚ましそして再度眠りについていく二人。
そんな二人を起こしたのは、秀一だった。
「ほらほら、二人とも起きて。もう夕方だよ。」
二人の身体を揺らす秀一を薄っすらと眸を開いてわぴこが見る。
「やぁ。」
小さく呟き葵によりギュッっと抱きついた。
どうやらその温かさから離れたくないらしい。
「駄目だよ。いつまでもここで寝てたら風邪ひくだろ。」
秀一は、苦笑しながらわぴこを諭すが頑として聞かない。
「やなの。」
そんなわぴこの様子に葵から笑みが洩れる。
「しょうがないな。葵、わぴこを抱いたまま部屋に来いよ。」
「了解。」
わぴこから離れろと言わないのは、わぴこが葵から離れないのを知っているからだ。
秀一は、葵とわぴこが起きあがったのを確認してから部屋に入っていった。
外に眸をやればもう空は、紅く染まっていた。
葵は、わぴこを抱いたまま立ち上がった。
「葵ちゃん。」
「ん?」
下から名を呼ばれ俯くと頬に柔らかいものが触れた。
「おはよー。」
それは、わぴこの色づいた唇で思わず葵は固まった。
「い、いきなりなんだよ。」
「おはよーのチュウだよ。」
まだ、眠たいのかふにゃ〜っとわぴこが笑った。
その表情に葵は、惹き込まれた。
―――チュッ
夕刻の色に包まれ葵は、自分の唇でわぴこの唇を塞いだ。
それは、本当に一瞬だった。
「今のっておはよーのチュウ?」
嬉しそうに首を傾げるわぴこに葵は、今が夕刻だということに感謝した。
きっと、今自分の顔は夕刻の色と同じ色くらいになっているだろうから。
「・・・あぁ。」
「これからもしてくれる?」
「わぴこがしてくれるならな。」
「うん。わぴこね葵ちゃんにだけチュウしたい。」
「そうか・・・俺にだけか。」
「うん。」
わぴこの言葉と嬉しそうな表情に葵も自然と笑みを零した。
「ほら、二人とも早く入っておいで。」
もう夕飯の準備が出来ているのだろう。
部屋の奥から秀一の声と共に良い匂いが漂ってきている。
「あぁ、今行く。」
「ご飯?わぴこお腹空いた。」
今まで大人しくしていたわぴこが足をばたつかせ葵を急かせる。
「だぁ、わぴこ急に暴れ出すな。」
「だってぇ・・・お腹空いたんだもん。」
「はいはい。すぐに食べさせてやるから大人しくしろ。」
「はぁ〜い。」
そうして二人は、部屋の中へと入っていった。
ちなみに猫たちは、さっさと温かい部屋で丸くなっていた。
今、秀一の目の前には、親鳥と雛鳥がいる。
葵の膝の上にわぴこが座り餌・・・いやご飯を口に運んでもらっている。
「わぴこ重いのけ。」
「やだ。葵ちゃんが食べさせてくれるって言った。」
そう確かに葵は、言った。
「食べにくいだろ?」
「全然。」
わぴこは、早くと口を開いて葵をジッと見つめる。
「たくっ・・・ほれ。ちゃんと噛めよ。」
「(パクッ)うん。」
数回噛みわぴこの表情が緩む。
「美味しい。」
わぴこは本当に嬉しそうだ。
「あっ、葵ちゃん。ちゃんとピーマンも食べなきゃ駄目だよ。」
「うるせー。」
『親鳥が雛鳥に叱られてる。』
そんな二人を観察しながら食べている秀一もなんだか楽しそうだ。