場所取り
良い天気のその日は、薄雲がゆっくりと空を流れていた。
「葵ちゃん、そっち持って」
「あぁ、持った」
「いくよぉ、そぉっれ」
わぴこと葵は、その青空の下で大きなブルーシートを広げていた。
「まぁ、こんなもんだろ」
「うっわぁ〜、広いねぇ、葵ちゃん」
わぴこが颯爽とブルーシートの上で転げ回っていた。
葵も靴を脱ぎブルーシートに上がる。
「よいっせっと」
葵が寝転ぶとわぴこもその横に寝転がった。
やはり雲は、ゆっくりと流れている。
「葵ちゃん」
「ん〜・・・」
「空、高いねぇ」
「あぁ」
「葵ちゃん」
「ん〜・・・」
「空、青いねぇ」
「あぁ」
「葵ちゃん」
「ん〜・・・」
「雲、どこに行くのかなぁ」
「さぁな」
穏やかな風が二人を通り過ぎていく。
「葵ちゃん」
「ん〜・・・」
「桜。桜きれいだねぇ」
「あぁ、そうだな」
静かな風に揺らされて桜の花びらがヒラヒラと空を舞っている。
「葵・・・ちゃ・・ん」
「ん〜・・・」
葵は、わぴこの次の言葉を待ったが一向に聞こえてこない。
「わぴこ?」
葵は、上半身を起き上がらせわぴこの顔を覗き込んだ。
――――― スゥ〜・・・
「昨日の夜からはしゃいでたもんな」
それに加えて、この陽気だ。
桜の花びらが、わぴこのおでこに舞い降りた。
ピンク色のわぴこの髪の色に薄紅色の桜の花びらが映える。
葵は、再度寝転び一度わぴこの横顔を見てから顔を空に向けた。
空に向けた葵の視線の先には、青い空と白い雲そして満開の桜が穏やかに揺れていた。
皆の集合時間まで、あと小1時間。
終了
平成22年4月17日