ある夏の日
窓を全開にして葵は、大の字になって寝ていた。
「あちぃ・・・。」
今は、午前十一時である。
これから一段と暑さが増してくるだろう。
時折自分の体温よりも低い風が舞い込んでくる。
―――――チリ〜ン
風鈴の音色は、涼しげだが暑いもの暑い。
わぴこは、朝のはよから遊びに行っている。
「ちゃんと帽子かぶって行けよ。」
「うん。」
葵は、わぴこに麦藁帽子を渡しまた横になる。
秀一は、開館時間ちょうどに図書館に着くように家を出ている。
「葵も行く?涼しいよ。」
「・・・冗談。」
涼しいという言葉に少しだけ惹かれたが右手をヒラヒラとさせ起き上がらなかった。
ジリジリと日差しが本当に暑苦しい。
「「「そろそろかな。」」」
三人同時に違う場所で同じ言葉を口にした。
葵は、立ち上がり三人分の少し大きめのタライを木々が青々と生い茂る庭の正面にある縁側の下に置いた。
そして、水をはる。
わぴこが日が出る前に木々に水を与えたのだろう。
ところどころで水滴が日差しに乾くことなくキラキラと光っている。
葵が三人分のタライに水をはり終える頃
「たっだいまぁ!」
麦藁帽子を片手で押さえわぴこが庭の門から帰って来た。
「おぉ、お帰り。」
わぴこは、即座に葵に・・・否、タライに近づきその中にパシャパシャと氷を放り込んでいく。
帰りに氷屋に寄って数個の大きな氷を貰ってきたのだ。
わぴこが三個のタライに氷を入れ終えた頃
「ただいま。」
玄関から秀一の声がした。
わぴこが、水と氷と素麺の入った器を持つ。
葵が、冷えたツユと三人分の小さな器を持つ。
秀一が、冷えたお茶と三人分のコップを持つ。
そして、葵・わぴこ・秀一の順番で縁側に座った。
―――――ガラ―ン
「つめた。」
「わぴこ、氷入れ過ぎじゃねぇか。」
「この暑さだし、すぐに溶けるよ。」
三人並んで木々の影で日差しを避けて足元は、ヒンヤリと天然冷房。
―――――ズルズルズルゥ〜
軽快な音をたてながら三人は、お昼御飯の素麺を平らげていく。
「そうだ、アイス買ってきたんだ。」
「アイスゥ、食べる。」
「これ食べ終わって片付けた後だな。」
「え〜。」
「そしたら、アイス食べた後すぐお昼寝出来るよ。」
「・・・うん、そだね。」
木々が日差しから守ってくれているからかタライの氷は、なかなか溶けなかった。
―――――チリ〜ン
風鈴の下で三人は、ちゃんとタオルケットをお腹にかけてスヤスヤと眠っていた。
終了
平成16年8月12日