冬はやっぱり

 

 

冬も本格的になってきて、冷たい風が葉の落ちた木々の間を通り抜けています。

そんな寒空の下でも今日もわぴこは元気です。

耳には秀一につけてもらった耳あて。

そして、首には葵に巻いてもらったマフラー。

それらは、わぴこを温かく包み込んでいます。

「わぴこちゃん。」

遠くから空中を漂うのはピンクの物体。

「ぎょぴちゃん。」

そう、それはピンク色した金魚のぎょぴちゃんでした。

世にも珍しいピンクで空を飛び『ぽてち』が大好きな金魚です。

ふわふわと飛んでいて猫に襲われないのが不思議なところです。

「今日は何して遊ぶ?」

わぴこに会えてぎょぴちゃんニコニコ嬉しそうです。

「今日はね、今日はね。」

「なにぃ?」

わぴこがピョンピョン跳ねてこれまた嬉しそうです。

「これぇ!」

勢いよくわぴこは手に持っていたものをぎょぴちゃんに差し出しました。

「?」

ぎょぴちゃんは、ふわふわと浮きながら首を傾げます。

「ぎょぴちゃんにあげる。」

わぴこの手には真っ赤な毛糸の小さな帽子。

「寒いから、ね。」

わぴこは、ぎょぴちゃんにその帽子をかぶせます。

「ありがとう、わぴこちゃん。」

ぎょぴちゃんの眸には、嬉し涙がウルウルです。

「それわぴこが編んだんだよぉ。」

その言葉にぎょぴちゃんの感激度は、上昇です。

「へへぇ〜あったかぁい。」

ぎょぴちゃんの言葉にわぴこも笑顔全開です。

「喜んでもらえてわぴこも嬉しい。」

しかし、次の言葉でぎょぴちゃんの感激度ちょっと下降します。

「葵ちゃんと秀ちゃんのマフラー編んで糸が余ったの。」

笑顔のその言葉がちょっとぎょびちゃんに衝撃を与えます。

「それで、それでもうすぐクリスマスだからぎょぴちゃんにプレゼントなの。」

つまり、ぎょぴちゃんにあげた毛糸の帽子はクリスマスプレゼントらしい。

「僕・・・クリスマスプレゼント貰ったの初めて。」

余ったとかついでとかもうそんなのどうでもよくてぎょぴちゃんは、やっぱり嬉しかった。

「本当?じゃわぴこがぎょぴちゃんの初だねぇ。」

「うん。」

ピンク色の金魚が真っ赤な毛糸の帽子をかぶってクルクル回転してます。

「ありがとう、わぴこちゃん。」

そうして、一人と一匹は寒空の下元気良く駆け出しました。

 

 

「たっだいまぁ〜!」

日も落ちかける頃わぴこは自宅につきました。

両親共に仕事が忙しく家にはいません。

だけど、わぴこの家の中は温かくわぴこを出迎える声があります。

「お帰り、ちゃんと手洗いとうがいしなよ。」

「はぁ〜い。」

秀一に言われた通りわぴこは、それらを済ませ居間へと向います。

「おぅ、この寒いのによく外なんかに行くよな。」

「あ〜!」

わぴこは、居間の真ん中を陣取るそれを指差します。

「出したんだぁ。」

―――プシュ―プシュ―

ストーブの上では、ヤカンの中でお湯が静かに沸いてます。

「おら、来いよ。」

葵に呼ばれわぴこは葵の横にちょこんと座り足を入れます。

「手ぇ貸せ。」

「ん。」

わぴこの小さな手を葵の手が包み込みます。

「お前手冷てぇぞ。」

そう言いながら葵は、わぴこの手を温めます。

「へへぇ。」

「なんだよ。」

「あったかい。」

わぴこの嬉しそうな顔から葵は照れくさいのか視線を外します。

「わぴこ、蜜柑食べる?」

「蜜柑?食べるぅ〜。」

秀一は、蜜柑が数個入った籠を置き蜜柑をむき始めた。

「はい。」

「ありがとう、秀ちゃん。」

綺麗にむかれた蜜柑を食しながらわぴこは、今日あったことしたことを二人に話します。

それは、本当に楽しそうです。

それを聞いている二人もなんだか楽しそうです。

話している最中、温かさから眠くなったのかわぴこは、眸を指で擦ります。

「やっぱりこれに入ると眠気を誘うよな。」

「温かいしなんかゆっくりできるからかな。」

瞼が降りる寸前にわぴこが見たのは、笑顔で談笑する葵と秀一でした。

「あ〜眠ったな。」

「昨日ぎょぴちゃんにあげる帽子夜中まで編んでたからね。」

「わぴこは、思いたったらすぐだからな。」

「まだ、夕飯まで時間あるから寝かせておいてあげよう。」

「だな。」

わぴこの寝顔をちょっとない見つめた後、二人も炬燵に潜り込んだ。

 

 

「三人とも起きなさい。」

 

 

三人がそう起こされるのは、後数時間後のことだ。

 

終了

平成16年12月21日