愛も変わらず

 

 

「受験なんて面倒なのよ。」

 

千歳のその一言で新田舎ノ中学は、中高一貫校となった。

当然エスカレーター式なので同じ顔ぶれそのままに皆高校生となった。

出来たばかりの高校なのでわぴこたち一年生しかいない。

そうなると当然生徒会長は、理事長である千歳になる。

そうなると当然他のメンバーも変わりない。

「わぴこ、お茶でもどうぞ。」

「ありがとー秀ちゃん。」

「秀、俺のは?」

「葵は、生徒会のメンバーでもないのになんでここにいるのかな?」

「そんなん中学の頃からだろ。」

「あのね、あのね、わぴこが誘ったの。」

「そうそう、わぴこが無理やり俺を引っ張ってここまで来たんだぞ。」

わぴこが誘えば葵が断るわけがない。

それでも昔から最初の誘いに乗らないのは絶対にわぴこが最後まで粘るからだ。

「おい、わぴこ。」

「うにゅ?」

「お前菓子くず溢してんぞ。」

葵は、わぴこの口の周りについたそれらを親指の腹で拭う。

そして、もう片方の手で器用にテーブルの上の菓子くずも一まとめにする。

「ん、ありがと、葵ちゃん。」

ソファーに座るわぴこの両隣には葵と秀一が陣取っていた。

それは中学時代からの定位置でもある。

「あっ、そうだ。秀ちゃん。」

「なに?・・・あぁ、あれね。」

「うん、どうなった。」

「目の前にいるんだから、聞いてみたら。」

秀一は、愛らしいわぴこに似合う淡い緋色の髪を優しい眸を向けながら撫でた。

それはもう聞いても否定されないことを意味している。

「ちぃちゃん。」

「なによ。」

「遠足に行きたい!」

「・・・いいわよ。」

千歳は、自分専用の豪華なカップに口をつける。

実質生徒会は秀一一人でもっているようなものだ。

なので秀一が千歳を納得させることなど容易いことだ。

それに千歳もわぴこを悲しませるようなことは、しない。

それでも反対してしまうのはお嬢様としてのプライドだろうか。

「ありがと、ちぃちゃん。秀ちゃんもありがと。」

わぴこは身を乗り出したまま秀一の方に振り向き、そのまま秀一に抱きついた。

嬉しさを体全体で表すわぴこの行動に、その横で葵が誰にもわからぬように溜息を吐いた。

「わぴこ、嬉しいのはわかるが今は会議中なんだろ。」

葵は腕を伸ばしわぴこの脇の下に手を入れ秀一から引き剥がしソファーに座らせた。

「えへ♪そうだったねぇ。」

にっこりと笑うわぴこの小春日和のような微笑に向かい側に並んで座っている新中学生徒会の面々の顔も綻ぶ。

「どうせ俺は反対された時ように連れて来られたんだろ。」

「うん。」

わぴこの答えはわかっていたがそれでも葵は少々へこんだ。

「それにね、最近一緒にいられない方が多かったから一緒にいたかったんだよ。」

「・・・そうか。」

「今日は、久しぶりに三人一緒に帰ろうね。」

「あぁ。」「そうだね。」

葵はぶっきらぼうに答え、秀一は書類をテーブルで整えながら答えた。

 

「理事長。」

「なに?」

「三人は仲がよろしいんですね。」

「そうねぇ。・・・甘やかしたくなるのよねぇ。」

千歳の言葉に新中学生徒会の面々は頷きそのまま視線はわぴこに注がれていた。

のほほんと見えるのに芯はしっかりしていて何が大事なのかをちゃんとわかっている人。

意外かもしれないがわぴこは数回しか会っていない新中学生徒会の面々からそんな風に思われていた。

それは、わぴこの中学生の頃を見ていたからかもしれない。

その時から相も変わらずわぴこの傍には葵もしくは秀一がいる。

「わぴこさんは、お二人が好きなんですね。」

不意に一人がそんなことを言った。

わぴこはキョトンとした顔を見せ、すぐにニコォっと笑った。

「うん、大好き!それに皆も好きだよ。」

「あ、ありがとうございます。」

「さてと、今日はもういいでしょ。」

秀一が話を終わらせるようにそう言った。

「そうね。それでは終了にしましょ。」

千歳の声と共に皆は生徒会室を出て行く。

 

 

わぴこを間に挟んで三人は家路に着いた。

「葵ちゃん、一緒にオヤツ買いに行こうね。」

「やだね。一人で行け。」

「え〜、一緒に行こうよ。」

「葵、一緒に行ってあげなよ。」

「なら秀が行けばいいだろ。」

「秀ちゃんは生徒会の仕事で忙しいんだよ。」

「お前だって生徒会だろが。」

「僕が生徒会の仕事をしてるから、わぴこがオヤツ買いに行くんだよね。」

「ね〜。」

わぴこと秀一は顔を見合わせて仲良く首を傾けた。

「しゃーねぇな。行ってやるよ。」

「わーい。」

「良かったねぇ、わぴこ。」

「うん。」

三人の影は夕焼けに照らされて長く長く伸びていた。

 

 

終了

平成19131

みらいさんからのリクエストでした。

 

中学の頃とあまり変わりませんね。

わぴこは下級生から人気があると思うのですよ。

先輩というか友達感覚の方が強いかな。

だけどちゃんと尊敬されていたりするっていうのがええな。

 

みらいさんに楽しんでいただければ幸いです。

アンケートに答えて下さりありがとうございました。