ずっと、一生
高校生になったわぴこは明るい緋色の髪が背中で揺れるほどまで伸びていた。
「ほら、ジッとしてろ。」
勿論、朝晩と梳かしてくれるのは葵だ。
高校生になった葵は、義務教育と違って授業料を払っているんだからとサボらず真面目に授業を受けている。
だけどサングラスは先生公認なので授業中もずっとかけている。
たまに外す時があるが、その時は女子生徒の黄色い声が響くのでよくわかる。
わぴこの髪が背中で揺れるのを眺めながら、わぴこの後から歩くのは葵と秀一だ。
「わぴこ、前見て歩け。」
「危ないよ。」
わぴこを見る二人の眼差しは幼い頃から変わっていない。
葵は、大切に愛しいように。
秀一は、大切に護るように。
それは、二人とも愛しい者を見る目には違いない。
ただ違うのは、『好き』と『愛』の違いだろう。
「葵。」
「ん。」
「お前、また告白されてたな。」
「ちっ、たくお前はなんでも知ってるな。」
ほんの少し遠くでわぴこが二人に向かって手を振っている。
「僕だけじゃなくて、わぴこも全部知ってるよ。」
「だろうな。」
葵は、別になにも隠さない。
葵は、ただわぴこを甘やかすだけだ。
純粋に甘やかすだけならきっと秀一の方が一枚上手だろう。
高校にもなるとお昼に給食はない。
その代わり食堂がある。
「ほら、わぴこ。ほっぺについてるよ。」
そう言って、わぴこの頬からご飯粒を摘まんで自分の口に含むのは秀一だ。
葵は一度舌で舐めとって千歳に首を締め上げられたのだ。
それ以来、一応人前では自粛している。
「葵ちゃんもついてるよ。」
だけど千歳はわぴこの行動は止めない。
言っても聞かないと言った方が良いだろうか。
周りの女の子は、羨ましそうにわぴこを見ている。
葵にとってわぴこは特別だと皆が認識している。
だから、女の子たちはわぴこを羨ましく思うが妬んだりはしない。
意地悪をしようとすれば葵に嫌われるのは一目瞭然だからだ。
わぴこは人前で平然と葵の膝に座る。
高校生になり身長も伸びて手足もスラッと伸びてわぴこはかなり可愛らしく成長している。
だけど中身は変わらない。
葵の膝の上だと大人しいし、皆もその光景に慣れているので何も言わない。
ただ新入生が毎年驚くくらいだろうか。
「葵ちゃん。」
「ん、どうした、眠いのか?」
わぴこがコクンと頷けば日当たりのよい中庭かもしくは生徒会室で堂々と膝枕だ。
逆の場合もある。
葵もわぴこも二人ともお互いの髪質が好きで膝枕の時は必ず髪を指で梳いている。
「葵様。」
その様子をひっそりと影から見る女の子の人影は怖いものがある。
「わぴこさん。」
その横でわぴこを好きな女の子や男の子が見守っているのだが、これまた怖いものがある。
二人はそんな周りの連中など気にする様子もない。
「葵ちゃん。」
「ん?」
「わぴこは葵ちゃんが大好きなんだよ。」
「あぁ、知ってる。」
「葵ちゃんが女の子に囲まれてても、わぴこは葵ちゃんが大好き。」
「囲まれてないだろが。」
「うん。そうだね。だけど葵ちゃんよく女の子と一緒にいるから。」
それはきっと葵が告白されている時を指しているのだろう。
「わぴこも皆と一緒にいるだろ。」
「ずっと、一生、一緒にいたいのは葵ちゃんだよ。」
わぴこの言葉に葵は頬を緩ませる。
「あぁ、そうだな。俺もずっと、一生、一緒にいたいのはわぴこだな。」
その言葉にわぴこは満面の笑みを魅せる。
葵はわぴこのそんな表情を誰にも見せたくなくて自分の腕の中に閉じ込めた。
こうして毎日甘い雰囲気が二人を包んでいる。
そして、その周りには異様な雰囲気が漂っているのだとか。
終了
平成19年2月26日
ゆーみさんからのリクエストでした。
わぴこも女の子ですから嫉妬もするでしょう。
だけど、やっぱりわぴこですのでわかりにくいかと:苦笑
葵ももてると思うのですが、きっとわぴこももてるでしょう。
それもわぴこは性別問わずもてそうです。
ゆーみさんに楽しんでいただければ幸いです。
アンケートに答えて下さりありがとうございました。