雪だるま わぴこ+葵+秀一
温かい布団の中で葵は身震いをした。
『なんだぁ?』
ありえない寒さに葵は重たい瞼をゆっくりと開いていった。
「?」
薄っすらとぼやけて見える視界の中に丸く二段に重なっている物が映し出される。
そして、それがはっきりと見えた時 葵はかなり呆然としていた。
―――――小さなお盆の上にちょこんと小さな雪だるま
それが葵の枕もとに置かれていたのだ。
しかし、葵に襲いかかっているのはそれだけの寒さではない。
葵は、恐る恐る窓際に視線を移した。
「ありえねぇ。」
葵は、ブルブルと寒さと怒りで身体を震わせながら叫んだ。
「わぴこ!」
冷たい空気の振動がピリピリと部屋中いや外にまで伝わる。
その声を聞いてかピョコンとわぴこが窓から顔を出した。
「おはよう、葵ちゃん。」
いつから外にいるのかわぴこの頬は、真っ赤だ。
「はよう・・・じゃねぇ!なんで窓開いてんだ!」
布団にくるまったまま葵は、窓そしてわぴこを指差した。
「雪が積もってたから。」
笑顔でそう答えるわぴこに葵は肩を落とす。
「寒いだろうが。」
「だって、雪だるまさん溶けちゃう。」
わぴこの言い分は、窓を閉めると雪だるまが溶けてしまうと言うことらしい。
「部屋に置くからだろ。」
「だってぇ、葵ちゃんに見せたかったんだもん。」
「もう、見たからこれ外に持って行って窓閉めろ。」
「え〜、葵ちゃんは?」
「俺は、まだ寝る。」
葵は、そう言って頭から布団をかぶった。
わぴこは、葵の言うとおり雪だるまを外の窓際に置いた。
「葵は?」
「また寝ちゃった。」
「やっぱり。」
秀一は、すこし大きめの雪玉を転がしながらわぴこに近づいた。
そして、微笑みながら手袋を外しわぴこの頬を包み込んだ。
「もう、僕たちも中に入ろうか?」
温かい格好をしていると言っても外は雪なのだ。
「これだけ完成させてもいい?」
ねだるようにわぴこは、首を傾げながら秀一を見つめた。
「いいよ。後はのせるだけだからね。」
わぴこは、秀一が転がしていた雪玉をそれよりも大きな雪玉の上にのせた。
そして、それにマフラーを巻き、赤いバケツをのせ石の眸をうえこんだ。
「完成。」
わぴこは、嬉しそうに雪の中を飛び跳ねている。
大きな雪だるまの周りには、小さな雪だるまが何体も存在していた。
「今年は、冷凍庫には入れないからね。」
秀一の言葉にわぴこは、え〜っと顔をしかめる。
「そんな顔しても駄目だよ。」
きっぱりと言う秀一にわぴこは、笑った。
「もう、入れちゃった。」
その言葉通り、冷凍庫は小さな雪だるまに占拠されていた。
秀一は、それを撤去するのを諦め温かい飲み物を準備した。
わぴこには、甘いココアを
自分には、ブラックコーヒーを
そして、起きてくるであろう葵のためにはわぴこが甘酒を温めた。
終了