傷 葵×わぴこ
小さい頃からわぴこは、傷が絶えなかった。
「ったく、本当に元気だな」
走り回るわぴこを見て葵は、ぼそっと呟いた。
「葵ちゃん」
「ん、どうした?」
「ひざ、すりむいた」
葵が、少し腰を屈めてわぴこの膝を覗き込めばそこは赤くなっていた。
「わぴこ」
「なぁに」
「お前、ここもすりむてんぞ」
葵がわぴこの前髪をかき上げるとわぴこのおでこも赤くなっていた。
「こりゃ、今日のお風呂はしみるな」
「え〜」
「え〜じゃない」
「葵ちゃん」
「なんだよ」
「おんぶ」
「なんで?」
「ひざ、いたい」
今日のお風呂を考えてかわぴこの眸を少し潤んでいた。
「しょうがねぇな」
葵は、膝を折りわぴこに背を向けた。
「葵ちゃん」
「なんだよ」
走り回っていたわぴこが葵の元へと駆けて来た。
「膝、擦り剥いた」
「ったくお前は本当に成長してないな」
スカートを膝上まで捲り上げるわぴこに葵は、深い溜息を吐く。
「少しは恥じらいを持てよ」
葵の言葉に首を傾げるわぴこの頭を葵は、撫でた。
「まぁ、これぐらいだと風呂に入ってもしみないだろ」
「え〜」
「え〜、ってなんだよ」
「おんぶは?」
わぴこの言葉に葵は、苦笑した。
「本当に成長してないな」
葵は、わぴこに近づいた。
「葵ちゃん?」
「お前スカートだろ。だから今日はこれ」
葵は、わぴこを抱き上げた。
それは、いわゆるお姫様抱っこだ。
葵に抱き上げられわぴこは、嬉しそうに笑う。
「へへぇ、葵ちゃん」
「なんだよ」
「ありがとう」
わぴこにお礼を言われ葵は、少しばかり頬を赤らめたがそれは夕焼けにより上手く隠された。
終了