素足 秀一×わぴこ
秀一が図書館から帰って来た。
裏庭から入り、木々が生い茂る涼しい道を進むと縁側に辿り着く。
「お帰りなさい、秀ちゃん。」
秀一は、照らされる太陽の光を遮るように額に手をあてた。
その先には、縁側に座っているわぴこがいた。
「ただいま。」
「暑かったでしょ。」
「そうだね。とても暑かったよ。」
わぴこは、少し大きめの桶に氷水を入れてその中に両足を入れていた。
「わぴこは、涼しそうだね。」
「うん。時折風も吹くんだよ。」
涼む前に庭に水を撒いたのだろう。
ここらに吹く風は、少し湿っている。
木々が太陽の光を和らげてくれているので一種の森林浴だ。
―――カラ〜ッン
秀一がゆっくりと桶の中に手を入れた。
「わぴこ。」
「なぁに?」
「ちょっと冷た過ぎるよ、これ。」
「そうかな?」
「だって、ほら」
秀一は、その中からわぴこの片足を持ち上げ、その甲に頬を寄せた。
「こんなに冷たくなってる。感覚ないんじゃない?」
「ん〜、ないかも。」
笑いながらそう答えるわぴこに秀一は、もう片方の足も持ち上げた。
「駄目だよ。凍傷になったりするんだからね。」
そして、秀一はわぴこの足に手を添え頬を寄せる。
「秀ちゃん気持ちいいの?」
「あぁ、冷たくて気持ちいい。」
わぴこは、秀一の行動に疑問を持つこともなくされるがままだ。
「感覚戻ってきたみたい。」
わぴこがピクリと足の指を動かして見せた。
秀一は、その指を揉み解すようにわぴこの足を手で優しく擦っている。
そして、わぴこの足を柔らかいタオルで拭いた。
「もう、今日は足の涼みは終了だよ。」
「え〜。」
頬を膨らますわぴこが可愛くて秀一の顔は綻ぶ。
「その代わり、ほら。」
秀一は、図書館帰りに買ってきた物をわぴこに見せた。
「シロップだぁ。」
イチゴにメロンにその他いろいろとその袋には詰っていた。
「出かける前に氷の準備したからもう出来ているはずだよ。」
「わ〜い。」
―――カラ〜ッン
桶の中の氷が揺れて、秀一はその瞬間嫌な感じがした。
「ねぇ、わぴこ。」
「なぁに。」
「この、氷どうしたの?」
「冷凍庫の中にあったよ。」
そうそれは、まさにカキ氷ように秀一が準備していた氷だった。
「もしかして、全部。」
「うん。全部使っちゃった。」
そう、わぴこが悪いわけではない。
ちゃんと言っておかなかった秀一が悪いのだ。
「使っちゃ駄目だった?カキ氷食べられない?」
大きな眸を潤ませて項垂れる秀一を覗き込むわぴこを秀一が叱れるわけもない。
「わぴこ。」
「うん。」
「一緒に氷買いに行こうか。」
「うん。行く。」
そうして、二人は涼しい縁側を後にした。
終了