不安 葵×わぴこ

 

 

ずっと一緒にいられるという保証なんてどこにもない。

もしかしたら明日・明後日ずっと先かもしれないけど離れてしまう日が来るのかもしれない。

 

そんな風に思い始めたのは何時からだろう。

 

幼い頃からずっと一緒にいてそんなこと考えたこともなかった。

だけど、今回秀一が違う高校に行くことが決定した。

「わぴこ、秀ちゃんとも一緒の高校に行きたい。」

俺の服の袖を引っ張りながら泣きじゃくるわぴこの頭を撫でてやる。

秀一は、こうなることをわかっていたんだろうな。

人一倍寂しがり屋のわぴこを宥めながら視線をわぴこの視線に合わした。

「なぁ、わぴこ。」

「ん?」

「秀一は、頭がいいのは知ってるな。」

「うん。」

「将来の夢も知ってるな。」

「お医者さん。」

「それになるには、もっと勉強しないといけないこともわかるな。」

「うん。」

わぴこは、俺の服の袖を引っ張ったまま視線を地面に落とした。

俺は、わぴこの頭をポンポンと軽く叩いてわぴこを抱き締めた。

「とりあえずは、まだ俺が傍にいてやるから。」

小さく頷いて俺の腕を小さな手で掴む強さに自然と顔が緩む。

「それに、高校が違っても永遠に会えなくなるわけじゃないんだしな。」

「うん。」

俺は、抱き締めたわぴこの柔らかい髪に顔を埋めて更に強く抱き締めた。

わぴこの不安がなくならないまでも小さくなることを願って。

 

 

終了