月見 わぴこ+葵+秀一

 

 

橙色の夕焼けを背景に緋色を揺らしながら手にはいっぱいのススキ。

 

「ただいま!」

 

元気な声が聞こえたが玄関が開く気配がない。

団子を作っていた葵と秀一は、顔を見合わせて玄関に向った。

玄関の向こう側では、ゆらゆらと何かが揺れている。

「「?」」

二人は、再度顔を見合わせて玄関を開けた。

「もうっ、二人ともお・そ・いぃ〜!」

大量のススキから顔を覗かせわぴこが頬を膨らませていた。

「お前・・・数本でいいって言っただろうが。」

葵が、溜息を吐きつつススキを受け取る。

「わぴこ、髪の毛にもついているよ。」

秀一が白くなっている手で髪を汚さないようにわぴこの髪にくっ付いているススキの葉をとった。

 

橙色の夕焼けは、もう地平の彼方だ。

 

紅い月が時間が経つにつれて淡い光を放つ蒼い月へと変化していく。

 

縁側にススキと団子を飾って三人は、寛いでいた。

「今年も晴れて良かったね。」

わぴこの笑顔が二人の表情を緩ます。

 

庭先では、鈴虫が鳴いていて秋の気配。

 

わぴこの右横に葵が座って、

わぴこの左横に秀一が座る。

 

三人揃って空に浮かぶ月を眺めて団子を食べた。

 

 

終了